栄養学者(食物繊維)
青江誠一郎先生コラム①日本人は食物繊維が足りていない
栄養学者(食物繊維)
きちんと知ろう、食物繊維とは?
「食物繊維」とはどういったものを指しているのでしょうか。
日本では「ヒトの消化酵素によって消化されない食物中の難消化性成分の総体」と定義されています。要するに、「人間が消化できない食品成分はすべて食物繊維」ということです。
しかし国によって食物繊維の定義は異なります。
たとえば、日本ではオリゴ糖は食物繊維に含まれますが、そうでない国もあるのです。
全世界的に認められている食物繊維にあたるのが、非デンプン性の食物繊維です。これは、多糖類とそうでないリグニンの2種類に大きく分かれます。多糖類はさらに、植物性、動物性、微生物性、化学修飾性に分かれます。リグニンはごぼうの皮などに含まれる成分で、これも食物繊維の中に含まれています。
デンプン性に分類されるものには、レジスタントスターチと難消化性デキストリンがあります。
これは全世界的に認められているわけではありませんが、消化されない成分ですので、日本では食物繊維と認められています。
また、食物繊維は水に溶けるタイプの「水溶性食物繊維」と水に溶けないタイプの「不溶性食物繊維」に分けることができます。それぞれに役割があり、どちらもバランスよく摂取することが必要です。
「水溶性食物繊維」は、食事1回で摂取できる量が不溶性食物繊維に比べて随分少なく、意識しないとなかなか摂取しにくい食物繊維です。
昆布やわかめなどの海藻類、大麦、ごぼうなどに多く含まれています。
「不溶性食物繊維」は、植物の細胞壁です。ですからこれは野菜を取れば大丈夫です。
皆さんが「野菜を食べて食物繊維を摂った。」と感じるのは、およそこれに該当します。
ちなみに水溶性食物繊維を多く含む食品に「こんにゃく」がありますが、製品化して固める過程で水溶性食物繊維が不溶性食物繊維に変わります。
そのためしらたき、食用こんにゃくのようなものは、不溶性食物繊維が多く含まれる食品に分類されることになりますね。
日本人の食物繊維摂取量の現状と目標量
「日本人の食事摂取基準」というものがあり、そこには食物繊維をどれくらい摂取したらいいのかということが表記されています。
2010年度版では、成人の1日あたりの食物繊維の目標摂取量は男性で19g、女性で17gでした。
ところが、現在の日本人の食物繊維の平均摂取量は、男性で14.5g、女性で14g、特に若い世代で不足しています。
私どもの学生でも10gくらいしか摂れておらず、この状況では便秘をするのは当たり前です。
これでは足りないということで、2015年度版では成人の男性で20g“以上”、女性で18g“以上”が目標摂取量となりました。「これだけ摂ればいいですよ」ではなく、「これ“以上”摂りましょう」に変わったのです。しかし、まだまだ十分に摂れていないのが現状です。
食物繊維の平均摂取量と目標値
子どもに必要な食物繊維は「1,000kcalで10g」を目安に
「子どもの食事や給食で、どのくらい食物繊維を摂らせたらいいのでしょうか?」という質問を受けることがあります。その場合、国の基準はないのですが、「1,000kcalで10g摂ることを目安にしてください。」と私は答えています。これが正常な排便をするのにちょうどいい量で、毎日排便がある、お通じが良い状況が期待できます。
お子様のお弁当を作る時などには、これを目安に工夫してみてください。